巨人のドラ2は何故当たらない? 指名選手を振り返る
どもども。
今回は水曜のヤクルト戦で今季2勝目を挙げたルーキー・畠世周投手の話から。
畠投手は最速155キロの速球を武器に三振を奪える投手です。ここまで23回1/3を投げて29奪三振。奪三振率にすると11.19です。リリーフエースのマシソン投手の奪三振率が11.25ですから、先発、しかもルーキーながらこの数字を残している畠投手の凄まじさがわかります。
やや被長打が多いので高スピンで「空振りを取れるストレート」かつ「当たると飛ぶストレート」かなという印象ですが、三振を奪えるのはやはり魅力的。奪三振というのは「最も安全なアウトの取り方」と言いますしね。
ドラフト2位という期待に応え、結果も潜在能力も見せている畠投手。しかし、巨人のドラ2にはあまりいいイメージがありません。
鬼屋敷、大累、和田恋と思いつく名前を並べてみてもちょっと…。
そこで今回は2008年以降のドラフト(2007年までは分離ドラフトだし2巡目の指名をしてない年が多いので)で巨人が2位指名した選手を見ていこうと思います。
即戦力より素材重視の黄金期
2008年から2011年までの4年間、巨人の2位指名はいずれも高校生でした。
巨人は2007年から2009年まで3連覇を果たすなど、戦力的に充実していました。資金的に補強が容易ということもあったのでしょうし、ドラフトでは現有戦力が数年経って衰えてきた頃に出てくるような素材を重視していたと言えます。
世代交代に備えた2位指名も…
巨人では完成しなかった大器・大田泰示選手を1位で引き当てた2008年。この年は1位でも目玉が多くない不作の年で、2位といえども2位の12選手中11番目に指名された宮本投手は他の年ならもっと下の順位で指名される選手だったのかもしれません。
本当かどうかはわかりませんが練習態度に難ありという噂もあり、ドラ2で入団したにも関わらず2年目の2010年オフには育成に降格。
その後2年間育成選手として在籍していましたが、2012年は公式戦登板もなく退団。
貴重な左腕として期待されていたことは間違いありませんが、2位という順位に見合う能力を発揮することはできませんでした。
巨人入りを熱望していた長野選手をようやく指名できたこの年、2位で指名したのは高専初のプロ野球選手となった鬼屋敷捕手。高専出身ということで指名できるかどうか微妙なところでしたが、二塁送球タイムが1秒64という強肩で注目度の高い選手でした。
そんな鬼屋敷捕手でしたが、この年最後の2位指名ということもあってかプロ入り後は苦労します。
同期入団した同い年の育成選手・河野捕手と競争して育てられますが、冷静に考えてみると2位指名の選手が育成選手と競争という時点で微妙。
4年目の2013年には一軍初出場を果たしましたが、ここまで一軍出場は通算2試合のみ。捕手というポジションの希少性もあってか8年目のシーズンを迎えてはいますが、背番号を95に変更された今季の主戦場は三軍。田中貴也選手の支配下昇格もありましたし、来季の残留へ赤信号と言わざるをえません。
まずまずの高校生投手2人
4連覇を逃した2010年、過去2年より指名順が早くなった巨人は2位で宮國投手を指名。
この年のドラフトでは、18番目まで高校生投手が指名されていませんでした。
宮國投手がこの年最初に指名された高校生投手ということになりますが、高校生投手では他にも東海大相模の一二三投手がいました。
当時の原監督の後輩にあたりますし、知名度も上だった一二三投手。ただ、一二三投手は3年生になって投球フォームを崩しサイドスローに転向。野手としても才能を評価されていましたが、投手としてより良い素材が欲しかったということか巨人の指名は宮國投手になりました。
巨人としては1位で即戦力の澤村投手を指名したとはいえ、優勝を逃したのだから即戦力投手を狙っても良かったはずです(巨人の後で西武が2位で牧田和久投手を指名している)。それでも宮國投手を指名したのだから、よほど巨人が素材型投手を求めていたことがわかります。2009年は育成を含めて高校生投手を指名せず、2008年に指名した宮本投手や斎藤投手といった高校生投手が期待通りの状況ではないということもあるのでしょう。
この宮國投手は2年目に一軍デビューを果たすと、3年目の2013年にはWBCの影響もあったとはいえ開幕投手に抜擢されます。
その頃の期待に比べれば現在の姿は理想的ではないかもしれませんが、宮本投手や鬼屋敷捕手と比べれば断然よくやっている宮國投手。まだ25歳という年齢も考えれば、十分期待できる存在ではあります。
2011年 今村信貴投手(太成学院大高) 全体20番目
この年の巨人は1位と2位で3年ぶりの高校生左腕を指名。そのうちの1人が今村投手でした。
宮國投手のようにその年の高校生では1番目とはなりませんでした(6番目)が、プロに入ってからはそこそこの活躍をしています。
1年目の2012年は一軍デビューこそならなかったものの、二軍でノーヒットノーランを達成。続く2013年には二軍で10勝を挙げ、一軍初登板と初勝利も果たしました。
しかし期待された3年目は防御率6.19と苦しみ、4年目の2015年には一軍登板なしに終わります。
それでも2016年には14試合に先発していますし、まだ23歳(来年3月で24歳)と若い投手。空振りを奪える球種がなく苦しんでいる印象はありますが、まだまだ伸びしろはあるはず。年下の左腕・田口投手の活躍を発奮材料にして頑張ってもらいたい選手です。
投手ドラフトの反動で野手を指名
巨人は2010年から2年間のドラフトで11人の選手を獲得(育成選手は除く)。しかし、そのうち10人が投手と極端な投手ドラフトが続きました。
その反動か2012年からの2年間では支配下で獲得した10選手のうち6人が野手。2位指名も共に野手となりました。
2年続けて2位で内野手を指名も…
2009年以降の3年間で指名した支配下の内野手は2011年5位の高橋洸選手のみ。その影響か2012年に巨人が支配下で指名した5選手のうち3人が内野手。2位で指名された大累選手もその1人でした。
一方で前年に菅野投手を指名した日本ハムに対する報復指名という噂もありましたが、プロに入った後はドラフト2位という期待通りの成績を残すことができず苦しみます。
ルーキーイヤーこそお試しで2試合に出場するものの、その後は2年間一軍出場なし。ショートには坂本選手がいる上に内野バックアップなら寺内選手、2014年からは片岡選手や井端選手が加入し、その後中日から吉川大幾選手がやってくるなど次々と逆風にさらされました。
「飼い犬より速い」と自慢の俊足をアピールしていた話は有名ですが、実際に足は速いのです。二軍戦で大累選手を見たことがありますが、めちゃくちゃ速かったです。ただ、攻守にいい評判を聞かない選手なので残念ながら足を活かしたプレーをするには至らない選手ということなのでしょう。
4年目の2016年の開幕直後、ドラフト時の噂もあった日本ハムへトレード移籍。俊足と内野外野を守る守備で巨人時代以上に出場機会を得ており、生まれ育った北海道の地で活躍できたらよいなと思います。
2013年 和田恋内野手(高知高) 全体24番目
和田恋選手はこの年のセンバツで4強に進出した高知高で強打の内野手として活躍。センバツでの活躍を見た当時の巨人のスカウト部長である山下氏からは「中距離打者で長野のようなタイプ」という評価を受けていたそうです。しかし、足が速くなく守備も上手くない中距離打者がプロの世界で活躍するには厳しいものがありました。
入団後は内野の様々なポジションに挑戦し、1年目の秋季キャンプでは捕手にも挑戦。今思うと、ドラフト2位で指名した高校生内野手に捕手までやらせようというのだから、スラッガーとしての期待をあまり持てなかったのではないかと感じてしまいます。
4年目を迎えた現在も一軍出場はなし。二軍と三軍を行ったり来たりの日々が続きます。今年のドラフトでは同い年の選手が大学からプロにやってくると思うと厳しい状態。いきなりクビになるかはわかりませんが、育成降格はあり得る話。なんとか打撃で目立ちたいところです。
黄金期の終焉 大学生が続く2位指名
2007年からリーグ3連覇を果たした巨人は、2010年から2年間は3位に終わるも2012年から再びリーグ3連覇。まさしく黄金期でした。
しかし、2014年はリーグ優勝こそ果たすもののCSでまさかの4連敗を喫し日本シリーズ進出はならず。そして2015年以降はV逸が続いています。
「4番捕手」としてチームの大黒柱を担ってきた阿部選手が内野手に転向したのを始め、かつてのチームは形を変え黄金期は終わりを告げました。
2008年以降6年間は2013年の大累選手を除き5度も高校生を2位で指名してきましたが、2014年以降の3年間は大学生の指名が続きました。
チームの課題解消を狙った即戦力指名
2014年 戸根千明投手(日大) 全体23番目
この年のドラフトは1位こそ高校生スラッガーの岡本選手を指名しましたが、他は育成を含めて高校生の指名がなく、即戦力を求めたドラフトとなりました。
戸根千明投手を獲得した意図はズバリ、中継ぎ左腕の強化でしょう。
巨人には絶対的な存在として山口鉄也投手が君臨し続けていましたが、そこに続く左腕がいない状態。2012年にルーキーながら大活躍した高木京介はその後苦しみ、満足な結果を残せていませんでした。山口投手だっていつまでも盤石なわけではないのだから、チームにとって中継ぎ左腕の強化は優先事項だったのです。
戸根投手は期待に応え、1年目から46試合に登板し防御率は2.88をマーク。思い切りよく内角を突く投球が高く評価されました。
しかし、継続することの難しさか、2年目の2016年は42試合に登板も防御率は4.50と悪化。3年目の今年も一軍では苦しい投球で現在二軍。
やはり山口投手には長年の疲れが出ていますし、FAで獲得した森福投手も思うような結果は出ていない状態。ブルペンに信頼できる左腕が加われば厚みが増すだけに、戸根投手の復活に期待したいものです。
2015年 重信慎之介外野手(早大) 全体22番目
2015年当時、巨人には大田、橋本到、立岡と3人の若手外野手がいたのですが、いずれも同学年でプロ7年目。そろそろ若手と呼べる年齢ではなくなりつつありました。
そんなわけで巨人にとって若手外野手の育成は急務。ドラフト前に色々とあった巨人ですが、2位で外野手の重信選手を獲得します。支配下では2009年の長野選手以来実に6年ぶりの外野手の指名でした。
由伸新監督の元、若い力の台頭が求められていた巨人では春季キャンプからさっそくチャンスを与えられますが、開幕が近くなるとプロの壁に当たるようになります。
それでも、自慢の俊足は大きな武器。1年目から二軍で36盗塁をマークし、一軍でも5盗塁を記録。同じく足を武器としていた大累選手が1年目は二軍で4盗塁8盗塁死だったのだからその凄さがわかります。
しかし、その盗塁センスが巨人首脳陣の判断を狂わせた感じがあります。
2016年、代走の切り札として活躍した鈴木尚広氏が引退。現在2年目を迎えた重信選手はその後釜として起用されているのです。
昨日の寺内選手の話もそうですが、どんなに偉大な控え選手もレギュラーを目指した結果として、様々な要因の中で控え選手となったのです。せっかくチームにいない若手外野手として重信選手を指名したのに、若いうちからレギュラー候補として育てないでどうするんだと思います。
首脳陣によってその将来に暗雲が垂れ込めている感じはありますが、その脚力が大きな武器であることは間違いないだけに期待したい選手です。
2016年 畠世周投手(近大) 全体22番目
今回の記事を書くきっかけとなった右腕。
巨人の先発陣は内海投手や大竹寛投手はベテランですし、マイコラス投手は近いうちにメジャーへ帰ってしまうかもしれないという状態です。宮國投手や今村投手も期待ほどは育っていない中で、若く実力のある先発投手は何としても獲得したいところでした。
基本的にドラフトで競合を嫌う巨人が、この年のドラフトでは田中正義投手、佐々木千隼投手と目玉の注目投手を指名しているのだから、その意図がよく伝わってきます。
結局田中投手も佐々木投手も引き当てられなかった中で、巨人の1位は内野手の吉川尚輝選手。そして2位でこの畠投手が指名されました。
ドラフト前の9月に右肘を痛め、入団後はリハビリからスタート。すぐに期待に応えるというわけにはいきませんでしたが、怪我があったからこそ22番目まで残っていた選手と言えるかもしれませんし、復帰後は高い能力を見せています。
冒頭に書いた通り、4試合の先発で被本塁打が4本と長打を打たれやすいのが課題ではありますが、与四死球は8と少ないし、ここまで2勝を挙げているように実力は確か。これから菅野投手、田口投手と共に長く巨人を支えてほしい存在です。
結局のところ巨人の2位指名が酷い理由は何なのか
過去9年のドラフト2位を見てみましたが、ランクをつけるとすると以下のような感じでしょうか
A
B 戸根投手 宮國投手
C 畠投手 今村投手
D 重信選手
E 大累選手
F 鬼屋敷選手 和田選手
G 宮本投手
重信選手は今みたいな使い方をせず育てていればCと言いたくなるくらい期待できたかもしれません。
そしてランクを見た時に注目したいのは、Dランク以上の5選手は戸根投手以外優勝していない年の指名選手、つまりウェーバー順が他の年に比べ早い年に指名した選手ということになります。
さすがプロのスカウトというべきか、良い選手は早いうちにとられてしまうということがわかります。それにしたって巨人の2位は酷いと思うが。
とりあえず、巨人の2位が酷いのはそれだけチームが安定してリーグ上位になっているからということで結論づけましょう。いい順位につけているうちは開幕からバリバリ働く即戦力よりも畠投手みたいな実力はあるけど怪我持ちみたいな選手の方が結果的にはいいのかもしれません、それで怪我が治らなかったらダメなんですけどね。
ただ、酷いといっても宮國投手や今村投手はまだ期待できる年齢と実績です。さらに戸根、重信、畠と大卒組も期待できるので、近年は前より良いドラフトができているということかもしれません。GMも変わったところでドラフト戦略にも期待してみたいですね。
それでは今回はこのへんで。
また次回!