裏のまた裏話

ドラフト2017 巨人振り返り② 巨人が挑んだ「勝負」

昨年のドラフトで残念だったことが1つあって、田中正義投手と佐々木千隼投手を指名したんですが、くじ引きをしたのが由伸監督ではありませんでした。

別に由伸監督だから当たりくじを引けるというわけでもないんですが、彼は華のある男。ドラフト含めプロ野球には物語があってこそだと思うので、数多の球団が欲する逸材を華のある由伸監督が引く場面を見たいんですよね。

繰り返しになりますが由伸監督だから当たるという保証は何もない。でも、勝負することが大事だと思うわけです。

そして今年、巨人は勝負に出てくれました。由伸監督が初のくじ引きに挑んだのです。

 

最初の勝負は早稲田実業・清宮幸太郎内野手の指名。言わずとしれた今年ナンバーワンのスラッガーです。

清宮選手にはロッテ、ヤクルト、日本ハム、巨人、楽天阪神ソフトバンクと7球団の指名が集中しました。高校生、また野手としては福留選手に並ぶ史上最多ということで、彼の実力と注目度がうかがえます。

 

7分の1の確率を引き当てるべく由伸監督がくじ引きに挑みました。

 

そして当たりくじを引いたのは……日本ハム

斎藤佑樹投手とか、有原航平投手とか競合で注目選手を引き当てているイメージの球団ですが、見事に清宮選手の交渉権も獲得しました。由伸監督からすれば自分の直前に当たりくじを引かれてしまったわけで惜しかった。

 

そして2度目の1位指名。履正社の安田尚憲内野野手、九州学院の村上宗隆捕手、ヤマハの鈴木博志投手といった有力選手が残っています。

巨人が指名したのは村上宗隆捕手。同じ左のスラッガーとしては清宮選手の方が高く評価されましたが、彼もまた劣らぬ素質を持つ強打者。良い指名だったと思います。

 

左のスラッガーとしては安田選手も候補に挙がりますが、村上選手を選択したのは安田選手より競合せずに済む可能性があること、巨人に小林選手と宇佐見選手以外に計算できる捕手がいないこと(捕手補強についての話は次回以降で行っていければと思います)が理由として挙げられるでしょう。

 

結局村上選手は安田選手と同じ3球団競合。

楽天嶋基宏捕手の後継者が課題で、広島と中日が指名した広陵の中村奨成捕手を指名するという噂もあったくらいなので、村上選手の指名もあり得ると思っていました。

 

予想外だったのはヤクルト。

高校時代も神宮球場で活躍したスーパースターの清宮選手を指名したのはわかるのですが、ヤクルトは今季96敗と散々たる成績。即戦力選手を獲得して来季の戦いに備えるものだと思っていました。もう少し具体的に言うなら、鍬原拓也投手や馬場皐輔投手のような大学生か社会人の投手を指名するものだと思っていたのです。

 

この点については今年の「即戦力投手」への評価が低かったのかもしれません。オリックスが交渉権を獲得した田嶋大樹投手やDeNAが一本釣りに成功した東克樹投手は即戦力の期待を持てるでしょうが、他の投手にいきなり先発ローテーションを任せるのは厳しいと判断したことが考えられます。

また、6人中5人が投手だった昨年のドラフトの影響もあったのかもしれません。

 

いずれにせよ、予想外のヤクルト参戦で3球団競合となった村上選手の交渉権。再び由伸監督がくじ引きに挑みます。

 

しかし当たりくじを引いたのはヤクルトでした。またも由伸監督は自分の直前に当たりくじを引かれてしまいました。

 

この結果は残念でなりません。一軍で安心して見ていられる左打者は現状で阿部選手と亀井選手の2人だけ。清宮選手や村上選手のような左のスラッガーは喉から手が出るほど欲しかった。

それでもくじ引きは運なのですからどうしようもありません。今年は由伸監督のくじ引きという勝負に出てくれたことに感謝でしょう。

 

それだけでなく、逃げずにチームの課題を埋め得る存在の清宮選手や村上選手の指名という勝負をしたこと自体も評価できます。結果こそ伴わなかったけれども、今年の巨人はドラフト1位でしっかりと2度の勝負をしてくれました。

 

 

そして2度の勝負に敗れた巨人は左のスラッガーを諦め、1位でしか指名できない好投手の指名に臨みます。

ここでの決断は清宮選手や村上選手の指名のような「勝負」とは違うものでした。

 

次回はそのことについて語っていければと思います。