裏のまた裏話

ドラフト2017 巨人振り返り③ 鍬原投手単独指名という選択

2度の勝負に敗れた巨人。3度目の1位指名は悪く言うのならば「逃げ」と表現できるのかもしれません。

 

阪神ソフトバンクの2球団が仙台大学の馬場皐輔投手で勝負する一方、巨人は中央大学の鍬原投手を単独指名。

馬場投手と鍬原投手のどちらが上かということについては何ともコメントできませんが、馬場投手で勝負してから鍬原投手を指名するという選択肢もあったということにはなります。

 

それでも僕はここで鍬原投手を指名して良かったと思います。

 

巨人にとって若手野手、特に左のスラッガーの台頭は至上命題。どんなに可能性が低くとも、清宮選手や村上選手で勝負する必要がありました。

しかし、その勝負は実りませんでした。もはや1位指名に値する左打者はいません。即戦力投手にシフトしたのは巨人にとって苦肉の策。投手を指名せざるをえなくなった時点で巨人はかなり追い込まれていたのです。

さすがにこれ以上の勝負をするのは自分の首を絞めるだけ。勝負することは必ずしも美徳ではなく、する場面としない場面の見極めが重要なのです。

 

ここで馬場選手を指名せず鍬原投手を指名したのは悪く言うなら逃げですが、あくまでも置かれた状況の中で最も確実な選択をした「戦略」であったと思います。

 

現に馬場投手の抽選にも敗れたソフトバンクはこれまで1位候補として名前の挙がることのなかった素材型右腕の鶴岡東・吉住晴斗投手を指名。

素材型の選手をじっくり育てる余裕のあるソフトバンクだからこその指名なのでしょうが、馬場投手や鍬原投手、また楽天が指名した近藤弘樹投手に匹敵するほどの大学生投手がいなかったと受け取ることもできます。

仮に巨人が馬場投手を指名して抽選に敗れ、その後鍬原投手も競合になって敗れたら? 一応日本ハム2位の西村天裕投手やオリックス2位の鈴木康平投手などが候補になったのかもしれませんが、鍬原投手を確実に獲れるのであればその方が良いと思います。

 

さらに言えば「中央大学の選手を指名した」ということも大きいと思います。

 

巨人には阿部選手や亀井選手、澤村投手と中央大学OBの現役選手がいますし、現役時代はアンダースローのリリーフとして活躍し、現在は二軍でトレーニングコーチを務める会田有志コーチも中央大学出身。かつては関係の深い大学でした。

しかし、2014年のドラフトで巨人は中央大学の島袋洋奨投手(現ソフトバンク)をスルー。それから巨人と中央大学の関係が悪くなっているとの噂もありました(まあ有力な根拠があるわけでもないのですが…)。

鍬原投手の指名でその噂は完全に払拭できたと言えましょう。プロ野球の球団とアマチュアのチームにはファンの目から見えないしがらみもあるのでしょうが、そういうのなしに色々なところから有望な選手を指名できた方が未来のチーム強化を考えても理想的。そういう意味でも今回の鍬原投手の指名には価値があったと思います。

 

 

清宮選手と村上選手には大胆に勝負し、続く投手指名の場面では冷静な選択。くじに敗れた以上「ベスト」とは言えませんが、置かれた状況の中で「ベター」な指名を見せた巨人は評価されて良いと思います。

 

 

今回は少し短いですがこのへんで。次回から2017年巨人のドラフトにおけるポイントの1つ「上位で捕手2人指名」について書いていきたいと思います。